身分制度
ひじょーにくだらない、いじましい話。
以前、私は小さな会社に所属していました。
その会社のクライアントは、誰もが知る大企業で、
子会社ではないものの売上のほぼ9割を、その大企業がしめていた。
私はその大企業に常駐していました。
だけでなく、一緒に仕事するのも、所属先より大企業の人がほとんどだった。
一緒に働いて、夜遊びをして、
所属先には◯◯気取りと陰口を叩かれるくらい、
おごりもあったんだろなぁ、華やかな世界を楽しんでいた。
でも時間は経ち、気がつけば私は若い女子ではなくなっていた。
若い子扱いされなくなってみて、気になり出したのが身分制度。
大企業には、厳然たる身分制度があったんです。
どこの部署出身か、大学はどこか、家柄は。
そして女子の場合、見た目も大事。
そもそも所属が下請け企業の私。
でも人間関係には恵まれて、主要プロジェクトに組み込まれることも多かった。
当然ながら嫉妬もあって嫌がらせも受ける。
嫌がらせで足を引っ張られたり、
大型プロジェクトで抜擢を受けたり、
その繰り返しでなんとかやり過ごしていたけれど、
でもかなり悪質なパワハラを受けるに至って、退職を決意。
業界にも、その大企業にもバイバイすると決めたけれど、
昔お世話になった、尊敬する先輩に声をかけていただいて、
グループ企業に入ることを決めます。
グループに入って早々、本社への出向が決まった。
少し身分を変えて戻った私への風当たりは、
あんまり変わらなかった。
下請け企業でしょー、から、出向でしょー。に変わっただけ。
どっちにしろ、身分は下。
でもそれはある意味正しいのよ。
正規ルートで入った人々は、受験戦争を乗り越え、
就職戦線を乗り越えてきた人たち。
それはつまり、退屈な授業を我慢できる人たちなのよね。
変にショートカットしてきた私は学歴がない。
だけでなく、退屈な話を聞けば、顔が退屈になる。
でもって、様式美というか冠婚葬祭というか、フォーマルが苦手なんす。
不貞腐れて過ごすこと一年。
先輩に呼び戻され、グループ企業に舞い戻ります。
で、今。
グループ間のパワーバランスも変化して、
本社とか子会社とかの区別もなくなり、
商流によって、上下関係は変化をするようになった。
歴が長いので、良くも悪くも顔だけは広い私。
あちこちでかつての知り合いに再会する。
昔の知り合いは私を、下請け企業の人間として認識してる。
でも今は、グループの人間だから、
ものによっては、こちらが発注側だったりする、
手のひら返す人もいるし、相変わらず威張る人もいるし、
それはもうどちらでもいい。
そしてまた驚く人もいる。あなたにこんなスキルあったの?と。
少しだけ気持ちいい。
そうなんです、今の私には何にもない。
学歴も、若さも、可愛らしさも、何もないけれど、
泥水飲んできたその経験だけは生きている。