新しい絆

友だちが子犬を連れて遊びに来た。

まだ散歩デビューもまもないうちのそらのは、

戸惑った様子で子犬と一緒に遊んで、

そして遊び疲れて、わたしの横にぴったりと寄り添って座った。

 

その時わたしはびっくりした。

そっか、この子にとってわたしは特別な存在なんだ。

誰が来てもフレンドリーになつく子だったし、

わたしのことを特別に思っているかなんて、よく分からなかったのだ。

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子犬訪問を経て、そらは他のわんちゃんとの触れ合いが格段に上手になった。

突進するくせは相変わらずだったけど、

吠えつくことはなくなったし、嫌なそぶりを見せられれば、

引くことも覚えた。

 

だんだんに、おいで、も覚えるようになって、

でもちょっとツンデレなところがあるとか、

夢中になると何も聞こえなくなるんだとか、

そういう性格がわたしにもだんだん理解できてきた。

 

ある日、いつものように大通りを散歩していた時、

近所のフレブルに出会ったそらは嬉しくて跳ね回って、

はずみでリードを落としてしまうことがあった。

 

リードの持ち手がアスファルトにあたって、カタカタと音を立てた。

その音が怖くて、そらは泣きながらさらに駆け出した。

バス通りの真ん中に向かって。

 

時間帯が朝の5時前だったこともあって、幸い車数は少なく、

ご近所さんが大声を上げてくれて、車が止まってくれた。

駆け寄るとそらが逃げると思ったわたしは、

手を叩いて名前を呼んで注意を引き、

ゆっくり近付いて抱き上げて、逃げるように歩道に戻った。

 

ご近所さんは肩を抱いて、よかったよかったと言葉をかけてくれた。

家に帰ると、身体が震えていて、涙がこぼれた。

 

また失うところだった…

今度は100%自分の不注意で。

そしてまたそらが、自分にとってかけがえのない存在になっていたことに気付いた。

ただの子犬じゃない、家族なんだ。

 

散歩や、一緒に遊んだり、遊び疲れたそらが膝で眠ったり、

大変なことよりも、嬉しいことが少しずつ増えていった。

はるたとそらの関係は相変わらずだったけれど、

そこにどんな風に介入すればいいのかも、だんだんにわたしも学習していった。

 

これからなんだなぁ。しみじみとそう思う。

 

そらの生涯は始まったばかりだし、

平均寿命を考えると、はるたもわたしもそらより長生きするはず。

七転び八起きではないけれど、これからもいろいろあると思う。

でもきっとこれからなんだと思う。