レン
おなかをみせるのが上手で。
にゃーと言わない代わりに、ぷすぷす、きゅるきゅる、ぐるぐる、ゴロゴロ、ふしぎな音を立てる子で。
いびきがでっかくて。
食いしん坊で。
ちゅーるも、ウエットも、人間の食べ物も大好き。
水を飲む時は、まず水遊びから。
あたり一面水浸しになるまで跳ね散らかして、
器の周りを掻きながら飲む。
一人が大嫌いで。
わたしか、先住のはるたに張り付いて。
病院に行く時は、一人でキャリーに入れられちゃうから、
その時だけは泣きまくる。
嫌すぎて、おしっこもらしたことも何度か。
寝る時は、布団に潜り込んでお腹に張り付く。
お腹をふみふみ。なぜか爪をたてててやる。
夜中に、掛け布団の端をちょいちょいとひっかく。
持ち上げてやると匍匐前進で潜り込む。
くるりと方向転換して、あごをわたしの腕に乗せ、
じっとわたしを見上げる。
そっと抱きしめて、わたしは囁く。
レンちゃん、あったかいねぇ、幸せだねぇ。
ずっとずっと当たり前に続くと思っていた日常。
キッチンに立っていれば、ぴょんとカウンターに飛び乗って、じーっとわたしの顔を見る。
手を拭いて、そっと抱きしめる。
レンちゃん、あなたはなんてかわいいの。
レンは顔をわたしの顔にすりよせてゴロゴロ。
ときどき力を込めて抱きしめてみる。
レンはきゅー(苦しい…)と言いながらじっとしている。
力を緩めると、一目散に逃げて行ったり、そのままじっとしていたり。
いつまでも写真を見ていたいけれど、
面影が写真に上書きされそうでこわい。
何度も何度もなぜた小さな頭が、白い骨になってしまった。
飛び跳ねていた小さな足も。
ぶんぶんと振り回して、わたしを叩いたしっぽも。
お風呂では、はるたとわたしがいちゎつくから、
戸口からそっと覗き込んで、飛び込んできて、
はるたをガン舐め、うんざりしたはるたがどけば、
はるたがいた位置に悠々と座り、わたしにゴロゴロ。
入りにくいなぁと思えば入り口からじっと見つめる。
その視線に根負けしてはるたが飛び出すと、
後でひとり戻ってきて、以下同文。
いつもわたしを見てた。
その視線を、当たり前だと思ってた。