危篤
水曜日の夜中2時半。電話が鳴る。
危険な状態です、すぐに来てくださいと。
着替えてタクシーで病院へ。
レンはぐったりと酸素室で寝ていた。
レン、呼びながら手を差し込む。
巻いていたマフラーをレンにかける。
わたしの匂いで、少しでも落ち着いてくれたら。
何度も呼びかけるうちにレンは身体を起こす。
わたしの手に鼻を押し付ける。
撫でていると医者が来て、状況説明を始めた。
苦しいかもしれないと酸素室の戸を閉めて話を聞く。
ふと見ると、レンがわたしをじっと見て何かを言いながら、戸を叩いている。
戸を開けると、声のないにゃー。
手を差し込んで撫でながら、話を聞く。
カリウムの数値が上がって、心臓は限界。
腎臓の数値も悪化している。
血栓が腎臓に回ったのか、壊死した下半身から毒素が回っているのかもしれない。
カルシウムを投与して、カリウムが下がればよし。
下がらなければ…
医者がいなくなって、戸を占める。
レンはぐったりと横たわり、もう何も言わない。
でも私が身動きすると、顔を上げてわたしをじっと見る。
ここにいてほしいのかな。
戸を閉めたまま、椅子に腰掛けて、レンを見つめる。
水の器をレンが覗いたので、そっと差し出すと、ぺろぺろと飲んだ。
看護師が来たから、水飲みましたというと、よかったと笑う。
これっていい兆しですよねと言うと、一転暗い顔。
レンは水を飲み終えて、私の顔を見ながらかわいい顔して、身体をよじった。
お腹みせようとしてるの?お母さんが来て嬉しいんだね〜
看護師がにっこりする。
がしかし、すぐに真顔で一旦帰れと。
暗い夜道をふらふらと家へ歩く。
ベッドに潜り込んで、気付けば寝ていた。
寝過ごす夢を見て、慌てて起きる。
電話が鳴っている。病院からだ。
カリウムの数値が改善して、ひとまず安心。
予定通り、午後の面会に来てください。
電話を切って時計を見ると、6時過ぎ。
起きることにする。
またも洗濯機を回して、朝ごはんを作る。
しっかりしなくちゃと思うと、味噌汁が飲みたくなるのは何でだろう。
時々、今すぐ病院に飛んで行きたくなる気持ちを堪えて、
レン。行くな。がんばれ。
呟きながら朝ごはんを食べる。
そういえば、しばらくお風呂に入っていなかった。
お湯をためる。
素っ裸になって、いざ入ろう!としたところで
電話が鳴る。
病院からだ。