愛情
レンが亡くなって一週間が経った。
レンとのお別れは、以前住んでいた家のそばに、動物霊園があると教えてもらって、
そこですることにした。
当日の朝、妹家族がレンとお別れに来てくれて、
車に乗せてもらって、霊園まで行った。
それまで、保冷剤の上に乗せて、身体や顔を撫ぜるくらいにしていたけれど、
同日の朝はもういいかと、ずっと抱いていた。
だんだん死後硬直が溶けて、柔らかくなったレンの身体は、まるで生きているかのようで、
赤ん坊を抱くみたいに揺すっていたら、レンの鼻が鳴った。
レンはねこなのに鼻をぷすぷす鳴らす不思議な子。
ブリーダーさんも、動物病院の先生も驚いていて、原因は分からないと言っていたけど。
鼻の形の問題なんだろうな。
ぷすぷす。
レンの直後の顔は苦しそうだったけれど、
最後は柔らかいかわいいお顔。顔も身体も。
骨になって戻ったレンを見つめるはるた。
ねこの世界では、この状況をどう理解するのか。
レンの遺体を撫ぜながら泣いていたとき、
はるたが、仕方ないよと言った気がしたし、
今は、時折探しているような、待っているような、寂しがっているような、そんな気がする。
お母さんが亡くなった時も、お父さんと妹と3人で看取り、
半年経たずにレンが行く時も、3人で看取った。
お母さんの時も、レンの時も、その後妹家族が駆けつけて、みんなで囲んで死を痛んだ。
わたしは愛情に囲まれているな。
はるたもレンも惜しまない愛情を向けてくれるし、
その2人は家族や友だちにたくさん可愛がってもらって。
母が亡くなったとき、胸が傷むのは愛がある証拠ですよと牧師さんが言った。
毎日胸が痛くて苦しいんだけど、痛みがなくなることはまるで、
レンが始めからいなかったかのように思えて、
こんなに悲しいなら忘れてしまいたいと発作的に思ったり、
わたしが忘れたら、誰がレンを覚えておくのかと。
あの子がゴロゴロぷすぷす言いながら、
わたしやはるたにべったりと張り付いて過ごして、
いたずら好きでものを落としたり、はるたにちょっかい出したりして、
こらーっと怒ると、レンがわたしを切ない顔して見上げて、思わず大好きよと抱きしめて、きゅーとレンがなく一連の儀式。
短かったけれど、幸せで濃い4年間。
レンが好きだったけりぐるみ。
はるたに差し出したら、めちゃくちゃ匂いを嗅いで興奮していた。
おまえ、ここにいたのかよー!
いつもやってたプロレス、えいっえいっえいっ
あれ?弱くなった?もっとやろうぜ。
どこにいるのさ。おれはここにいるぞ。
早く帰ってこいよ。