発症

火曜日の深夜3時に絶叫で目が覚めて、

見るとベッド下に転がって泣き叫ぶ猫のレン。

どうした?と手を差し出すと、逃げる様子もなく、身体を捩って泣き叫ぶ。

抱き上げると下半身はだらりとぶら下がる。

濡れていて、臭いはしない。

 

どうしよう?いつもの病院は当然夜中なのでやってない。

朝まで待つ?9時の開院まで6時間もある。

Googleマップで、「動物病院 24時間」で検索。

ヒットした2件のうち、点数の高い方へ電話。

すぐ来てくださいと。

 

着替えてベッドに戻ると、レンは泣きながら下半身を引きずり、ベットの上を這いずっていた。

抱き上げてタオルと一緒にキャリーに押し込む。

タクシーを捕まえて、行き先を告げる。

 

病院は静かに灯りを灯し、ロビーで待たされる。

泣きながら、キャリーをかくレン。

そのうちお医者さんが現れて、個室で話をする。

何を話したか覚えていない。

 

またしばしロビーで待つ。

泣き叫ぶレンを抱き上げる。

レンはいつもの通り私の肩にしがみつく。

 

また別の個室へ。

危険な状態ですと言われて呆然とする。

血栓が、股関節の動脈に詰まっていると。

だって病気なんて持ってなかった。ずっと元気だったんですよ。

2時間前に私がトイレに行った時も、いつも通りついて来て、

トイレの前で待っていた。

 

入院になりますが、覚悟してください…

話を遮って、分かりましたから、こんなに叫んでるんだから、何かしてあげてくださいと言う。

 

医者がレンを抱き上げて連れて行く。

レンは私を見ながら絶叫する。

呆然と見送る。

 

しばしして、ICUに通される。

酸素室に入って、一転静かにしているレン。

痛み止めを打ったとのこと。

ホッとして、よろしくお願いしますと頭を下げる。

 

入院の手続きをして外に出ると、夜が明け始めていた。

明るくなり始めた街を歩く。

 

近くの父の家で、お母さんにお線香。

数ヶ月前にお母さんを看取ったのに。

こんな短いスパンで同じことするの?

お母さん、レンをお守りください。

 

物音で起きた父に事情を話す。

話しながらぼろぼろ泣く。

まだ分からないだろうと言われ、少し落ち着く。

 

家へ戻ると、おしっこ臭でいっぱいだった。

キッチンの隅にはうんこが落ちている。

 

洗面所に置かれたレンのトイレは上から入るタイプ。

きっと入れなくて困ったあげく、キッチンの隅でして、

そのままベッドまで這いずって来て、私を呼んだんだな。

床にはおしっこの道ができている。

わたしはこの全部にまるで気がつかなかった。

 

洗濯機を回し、床を拭きながら、泣く。祈る。

レン、がんばれ。行くな。